王座には珍しくデールとヘンリーしかおらず、二人は真面目な顔で何やら会話を交わしていた。 には気づきそうにない。二人は目くばせをして、うん、と頷きあった。

「兄さん」

 の一言に、ばっと二人がこちらを見た。王座に座っていたデールは無言で立ち上がり、瞬時に駆け寄ってきてを抱きしめた。

、お前どこいってたんだよ……!」
「ごめん兄さん、俺、どうしてもやりたいことがあって……でも、俺、見つけたんだ」

 はヘンリーの隣へ赴く。ヘンリーはにっと笑んで、ありがとうな。と肩を組んだ。

「俺、王子としてやることがある!」




繋いでいく想い





「ヘンリー兄さん、初めまして……っていうのも変ですね」
「俺は見たことあるけどな、はまだ赤ん坊だったもん。」
「はい。出会えてよかった」

 ヘンリーとの若干のぎこちなさを少し面白がりつつも、は本当によかったとこころから思った。このラインハットの悲劇も、ようやく終わりを迎えそうだ。

さん、本当にありがとう」

が頭を下げた。はへら、っと笑って、顔を上げて、といったが、は顔を上げない。

「俺からも礼を言う。本当にありがとう……。親友、本当に大好きだぜ」
「よせよ。でも、本当によかった。俺も安心して出発できる。って、王子、いい加減顔を上げて」

 肩をつかんでしゃがみ込み、を見上げる。は泣くまいと必死に涙を堪えていた。

「王子、これからがあなたの戦いだ」

 そっと、言葉をへと紡いでいく。

「頑張ってください」
「……っ! 何から何までほんと、俺……!」
「あーあー、泣くなよもう」

 顔をぐちゃぐちゃにして涙を流すは本当にかわいらしい。こんなに一生懸命国のことを考えられる王子がこの国にいるのなら、もうラインハットは安心だろう。

さん、俺が、必ず、復興させてみせます! そのときは、また立ち寄ってください……!」

 ごしごしと涙を乱暴に拭いてが精悍な顔になった。やるべきものを見つけた一人の立派な男だ。は口角を上げて、ひとつ頷いた。

「待ってるよ」
さん本当にありがとうございました……。何から何までさんには助けられっぱなしです」
「本当だぜ。俺たちキョーダイ、みんなに助けられてんなあ」
「大げさだな」
「なあさん、しばらくいるだろ?」
「いや、もう出るよ」
「ええ! もう??」
「こら、わがまま言うな。」

 デールが一喝する。自分もヘンリーもデールよりも年上であるため、彼の年上らしい一面に新鮮さを感じた。

「なあんだデール、ちゃんと兄貴やれてんだな」
「皮肉なことに、兄としていることのほうが長かったものだから」
「兄さんの兄さんだもんね」

 これから新たに彼らの兄弟としての日々が始まる。ヘンリー、デール、。楽しそうに笑いあっている三人の様子を見て、思わずこちらもほほ笑む。三人の、やっと訪れたあるべき形を喜ばしく思いつつ、は一人旅立った。まだ見ぬ勇者を求めて。





「すっかり元通りだな。」
「うん、本当……結構時間はかかったけど、でも、やれることをやったつもり」

 緑が茂り、花がを歓迎するようにそこらじゅうで咲き誇っている。サンタローズはかつての様相を取り戻しつつあった。
 は村の中を案内してくれたのだが、彼は村の人から人望があるらしい。どの人もの姿を見ると声をかけてくる。これだけ頑張って村の復興に尽くしていて、全力の人がサンタローズの人たちに好かれないわけもないか。とは納得した。

さん、俺をラインハットに連れ戻してくれてありがとう。あのとき俺にやるべきことを教えてくれなかったら今も俺はサンタローズで亡くなった人たちへの罪悪感とともにひとりで生きていたんだと思う」

 瞳から光が消えてしまった、生ける屍のような顔での前に現れたが蘇る。いま隣で生き生きと語っているは、昔より随分と大人びて、頼りがいのある青年に成長した。

「もう一度、たくさんの人に愛されて、住まれる場所にすること、できてよかった」
「ありがとう王子。サンタローズの人たちもきっとお礼を言ってる」
「!!!! さ……!」
「お、おい! 泣くなって……」

 相変わらず涙もろいらしい。感極まって、息を荒くして涙をごしごしと拭いている。

「うれし、っす! さ……ありが、と!!」
「わかったから、わかったから」
「えー泣いてるーどうしたのー?」
「うるせー!!!」

 近くで遊んでいた子供たちがの異変に気づいて駆け寄ってきたので、は慌てて顔を隠し、しっしっ、と手を払った。子供たちはニヤニヤ笑いながら、遊んでいた場所に戻って遊びを再開した。本当に、まるでかつてのサンタローズのようだった。

「もう二度と、同じ過ちを繰り返さない。誓うよ」
「ああ。きっと大丈夫だ」

 は目をつぶり、黙とうを眠れる死者たちにささげた。


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大変お待たせしてしまいました!クリタさまリクエストの夢、完結でございます。
リクエストありがとうございました。ご期待に添えたかわかりませんが(・・;)
5主友情夢、ラインハット第三王子でした!
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