「もう何年になるんだろうね」 ポツリ、が言った。たぶん、俺たちがこの光教団とかいう馬鹿げた宗教団体の神殿建設現場に連れ込まれてからどれぐらい経ったのかと言うことだろう。 「結構、経つね」 毎日毎日同じことを繰り返しているから、もうどれくらい経ったかなんてわからなかった。たぶん、すぐそばでぐーすか寝ているヘンリーに聞いても同じ答えが帰ってくるはずだ。 は俺の父であるパパスが拾った、いわゆる捨て子だった。でも小さいときから一緒で、まるで兄妹のようなのだが、でも妹だと思っていたのは小さい頃だけだ。大きくなっていくにつれて、を女性として意識する気持ちは肥大して行く一方だ。 俺は、が好きだった。 「このまま一生ここで過ごすしかないのかな……」 ひざこぞうをかかえ、切なそうに呟いたの肩を自分の方にそっと寄せる。 「のお母さん、探したかったね」 「大丈夫。いつかこんなところ抜け出せるよ」 の頭に頬を摺り寄せて目をつぶる。抜け出したらまずどうしよう?母さんを探すためにいろいろしなきゃな。まず何からしよう。 ――そのまえにに想いを伝えなきゃな。 「ねえ」 「ん?」 「わたしね、とヘンリーがいてよかったよ。わたしひとりこんなところで労働させられてたらきっと、もう笑うことだってできなかったと思うの。だからね、うまくいえないけど……ありがとう」 「……どうしたの突然。なんかあったの?」 「………。えへへ。今日ね、見ちゃったんだ。わたしたちのちょっとあとぐらいに入ってきた女の子が死んじゃって、運ばれるの」 が、震えていた。 「とヘンリーがいなかったらわたし生きていけないよ……」 「」 肩に回した手に力をこめた。 「俺が必ずを守るから。ここから連れ出すから」 「ありがとう……」 絶対にを離しやしない、と自分に誓った。 「そしたら聞いてほしい話があるんだ。そのときまで待っててくれる?」 「いまはいえないの?」 「いま言ったっていいんだけど、でも、約束を果たした後で伝えたくて」 「わかった。じゃあ、そのときを楽しみにしてるね」 俺たちがこの無限労働の世界から抜け出したのはこの数日後。そして俺がに想いを伝え、結婚が決まったのも数日後。 僕が君を守るから |