(はー……ち、ち、近い!近いです!……うう、かっこいい!)
一緒のベッドで、とは、抱き合って眠っていた。のだが、どうにも緊張して眠れない。
瞳を開けてこっそりとの顔を盗み見ると、端正な顔立ちのに、緊張が増すばかりだった。
(かっこいい……な。)
小さく漏れている寝息は彼が眠っている証拠。
それを確認して、はの唇に指先をちょん、とつける。
そしてそれを、自分の唇に持っていく。
(間接チュー、です。えへ、えへへへへ。って何してるんですかわたし!!)
自分でやって照れときながら自分で自分を叱咤する。
改めてを見ると、いつの間にやら彼はぱっちりと目を開いていた。
「……?」
「は、い……。」
「今、何してたの?」
がゆっくりと聞いた。
その瞬間、の心臓がどきっと跳ね上がる。絶対に絶対に絶対に、なにしたかわかってる。
はたまにいじわるだ。でもそのいじわるが、好きだったりする。
「いじわる……。」
「いじわるだよ。」
そういってはにっと笑って、に回していた腕にぎゅっと力を込めた。
「好きな子にいじわるしちゃうのが、男の子ってやつでしょ。」
耳を通るがなんだかくすぐったい。このまま時が止まればいいのに、とすら思った。
恋とは怖い。”好き”とは怖い。
「ほら、明日も早いんだから早く寝よう。」
「はっはい!」
に頭を撫で付けられて、は身体の芯がじーんとしびれる感じがした。
するとだんだんと、うとうとしてきた。はやがて深い眠りの海に旅立った。
「あんま可愛いことやらないでよ。」
ぐっすりと眠っていざ魔物の城――デスパレスへ。
しかし、船から降りて少し進むと、魔神像と呼ばれる巨大な像が聳えていた。
「ここがデスパレスというわけではないのですよね。しかし、この像から先は行き止まりのようです。」
クリフトが大変不思議そうな顔で首をかしげる。
「本当ね。とりあえず、中に入ってみましょう。」
何にも臆することなくアリーナは、邪悪な顔をした魔神像の入口へとずんずん進んでいった。
そのアリーナの後ろを導かれしものたちが続く。はアリーナのこの後姿が好きだった。
(姫さま……なんてかっこいいんでしょう。)
うっとりとした横顔をがちらっと見つめる。
(アリーナに見とれてるの顔……あんな顔でいつかに見つめてもらいたいな。
ん、ああ、そうか、俺もかっこいいところを見せればいいのか。そうすればのあの視線も俺だけのものになる。)
にや、との口角が上がった。
「なんだか今日の殿はいつになく張り切ってますなあ。」
髭をいじいじしながらライアンがしきりに頷いた。トルネコも同意するように頷く。
はこの魔神像の中で誰よりも先にモンスターに飛び掛かり、いつにない気合の入れようで次々と倒していった。
「楽に先に進めます。」
「はっはっは!なるほど!!」
何が面白いのかライアンが大きな声で笑った。
一方話題の人、は、モンスターを倒したところで、ちらりとの顔をうかがう。
はのことを見ていて、目が合うとほほ笑んでのもとへと駆け寄った。
「お疲れ様です!なんだか今日のは、随分と張り切ってますね。」
「(張り切ってる……。)うん、俺が頑張らなきゃね。」
「よーし、わたしも頑張ろうかな。」
が両手を握って、気合を入れる。そんな姿もやっぱり、好きだった。
そんなもので、魔神像をさくさくと上りつめていく。
すると、一番上の部屋はまるで操縦室のようになっていた。操縦室の窓からは、行き止まりだった
この魔神像の先の光景が広がっていた。魔神像の目の前には川が流れており、その先に大地は広がっていた。
大地の遥かかなた、に見えるは城。きっと、あれがデスパレス。
「困った……。どうやって向こうに行けばいいんだ。」
うーん、と困ったように首をかしげる。まさか泳いで向こう岸に向かうわけにもいかない。
クリフトは泳げないし、服はびしょびしょになるし、旅の備蓄がぱあになってしまう。
そして奇跡を呼ぶ男が、奇跡を起こした。
魔神像攻略