サランへやってきた。サントハイムのすぐ近くのこと町の人々はこころなしか表情が暗い気がした。無理もない、サントハイム城には魔物が巣食っていたのだから。いつ攻めてくるかもわからないのだから。
 しかしいずれサントハイム城の魔物はいなくなったことは噂であっという間に広まるだろう。
 サランで兵士を探すのはとアリーナ。トルネコとクリフトは道具の調達。ブライとライアンは宿の手配。マーニャとミネアは町の人に情報を集める、といったように役割を決めてそれぞれ行動をすることになった。

「さあ、サントハイムの兵士はどこかしら」

 アリーナがきょろきょろとサランを見渡す。

「兵士ならわたしの知っている方かもしれません。……あ、あの方かもしれません!」

 どこかで見たことのある姿を宿屋の近くで見つけて、は確信はないが一目散に駆けよった。の猪突猛進さを笑いあいつつ、後をアリーナとがつづく。

「す、すみません!」
「はい……って、ちゃんじゃないか! それにアリーナ姫さままで! 久しぶり!」
「お久しぶりです……! 無事で、なによりです!」

 やはりサントハイム騎士団だった。見知った顔に会い、嬉しさがあふれてくる。サントハイムの人だ。

「実はあの日、俺は用事があって朝から出かけていたんだ」
「何か、あの日のことについて知っていることはありませんか」
「ああ、王様が夢のお告げを城のみんなに伝えようとしていたんだ。何やら地獄の帝王についてだとか……」
「じ、地獄の帝王ですか!?」
「あ、ああ」

 繋がる。欠けていたピースが一つ集まった。

「教えてくださりありがとうございます」
「サランにもし魔物が攻めてきたら、守って頂戴ね」
「はい! この命に変えても必ず!」

 アリーナの言葉に、反射的に敬礼をした騎士には少し笑いつつ、「そうだ」と思いだす。

「サントハイム城に巣食っていた魔物たちは無事退治しましたので。安心してくださいね」
「ええ!? やつらをかい?」
「はい」
「つ、強いんだなぁ……尤も、アリーナさまがいたんじゃ、無理もないか」
「ふふっ、任せてちょうだいよ。それじゃ、そろそろ行くわよ」
「では失礼します」
「ああ待って! ちゃん、君たちは確か世界を視察しにいったと聞いたが、一体いまは何をしてるんだい?」

 騎士の問いに三人は目を合わせてイタズラっぽく微笑み合うと、

「世界を救ってます」

が騎士に言った。騎士は目を丸くして、「そっか。頑張ってね。」と言った。



欠けたピースさがし



「繋がりましたね」

 地獄の帝王の復活を予見した王。それを知ったデスピサロがサントハイムという危険粒子を消すために武術大会を辞退。そしてサントハイムへ向かい、王もろとも地獄の帝王の復活を知ってしまったものたちを消した。(あくまで事実を繋ぎ合わせた憶測でしかないが)

「けれど、お父様たちは……どこへいったのかしら」

 宿屋へ戻ってきた、アリーナは、宿屋の手配をして待機していたブライ、ライアンと合流した。サントハイムの騎士が言っていたことを二人に伝え、他のメンバーが戻ってくるまで宿屋のロビーで情報の整理と今後について話し合うことになった。

「俺、ちょっと考えたんだけど、もしかしたら、魔力で封印されたのかもしれないよ」
「どういうこと?」
「俺の憶測でしかないんだけど、争った痕跡もなく、ただ人が消えていただけなんだろ?」
「そう、そうなの」
「どこかへ連れて行くにしても争ったあとが残るし、殺したとしても、あとが残る。けれど人だけが消えて他は何もかわってないということは、デスピサロが魔法でどこかへつれていったか、或いはその魔力を持って存在自体をどこか違った異次元に封印したのかもしれない、っておもったんだ。今デスピサロは地獄の帝王を蘇らせようと奮闘している。サントハイムの人々を始末するにはそれなりの武力がいる。犠牲も出てしまう。そうなれば封印と言うのが一番ありえるかなと俺は思う」

 の見解は実にリアルな線をいっているとおもった。そのように仮定してみると、話しはうまくまとまる。ブライもそれは同じらしく、なるほど、といって腕を組んだ。

「やるわね
「まあ、ただの憶測だよ」

 隣同士に座るアリーナとが微笑み合う。その姿があまりに似合っていて、の胸にもやもやとしたものが宿った。

(……なんです、このきもち。へんなかんじ)

 その気持ちの正体を探る前に、宿屋に新たな客が入ってきた。

「クリフト、トルネコさん、おかえりなさい」
「ただいまかえりました」
「いや〜いっぱい買ってしまいました」

 クリフトが大きなふくろを抱えていた。やくそうやらなにやらこれからに備えてたくさん買ったようだ。次にマーニャが急ぎ足で帰ってきた。

、大変だよ。手がかりを発見したんだ。みんなきてよ」

 マーニャの言葉に、一行はマーニャを先頭に町の奥へと移動した。ミネアと老人が立て札のそばでたっていて、一行に気付くと、ミネアが老人に何か言い、老人は「おお」と驚いた。

「コチラの方は、昔サントハイム王様のしつけ係だったんです」
「お父様の? お父様にもそんな時代があったのね」
「アリーナさまじゃな。こんなに大きくなったのですかな」
「ええ。もう17になります」
「時が過ぎるのは早い……。わしも年をとりましたな」

 老人は感慨深げに一頻り頷くと、ミネアが「おじいさま」と急かすように呼びかける。すると老人は「おおそうじゃった。」といい本題に入った。

「その昔サントハイム歴代の王様は、未来を知ることが出来たとか。だとすれば今の王様にもそういう力があったのかも知れませぬ。まだ王様が小さかった頃、夜中うなされて起きたと思ったら、わしにせがむんじゃ。僕の娘が困っているから立て札を立てておくれよ、と。それがこの立て札なんじゃ」

 老人の言葉を受け、アリーナが立て札の文字を読む。

「ええと……“お空のずっと上には天空のお城があって、竜の神さまが住んでるんだって。竜の神様はとても強くて大昔、地獄の帝王を闇に封じ込めたくらいなんだ。天空のお城のことは、北の海のスタンシアラの人が詳しいよ。”」
「いく価値はあると思います」

 ミネアの言うとおり行く価値は十分ある。手がかりが何もない今、サントハイム王の夢に頼ってみるしかないだろう。
 は頷いた。

「ありがとうございますおじいさま。お送りしますわ」

 宿屋でのちほどお会いしましょう。と言ってミネアは老人を家へ送り届けにいった。一行は宿屋へ戻る。その間はちょくちょく上空を見上げて、天空の城なるものを探していたが空には橙の雲しかなかった。
 宿屋に戻ると各々荷物をおいて再びロビーに集まってミネアの帰りを待った。

「天空の城っていってたけど、本当にあるのかしら」
「さっき空を見上げたときはありませんでした」
「ちょっと見てきましょうよ。今見たらあるかもしれないわ」
「そうですね!」
! ずるいです!」

 アリーナに手を引かれて宿を出る。クリフトにふふん、と微笑みを向けると、クリフトは顔をしかめ悔しがった。その様子を見てが切なそうな顔をしたのは、誰も気付かれることなかった。

(もしかしたらは………)