「ひどい……」

 呟いたのはアリーナだった。
 ついにサントハイム城へ一行はやってきた。あの美しかったサントハイム城は今や魔物が巣食っていて、見る影もなく荒らされていた。自分の故郷が、家とも言えるところが、魔物たちによって荒らされている。ひどくいやな心持になった。

「許せないよ、バルザック」

 マーニャの表情が険しい。彼女はいつも気楽そうに見えるが、復讐を胸にしっかりと誓っているのだ。それはミネアも同じで、彼女の表情もいつもよりも鋭かった。

「いこう」

 の声で、城に突入した。



サントハイム城奪還



「なんなんだおまえら! ここサントハイム城は俺たち魔物がいただいた!! この城の王はバルザックさまだ!」
「ここはあたしたちの城よ! どっかいきなさいよ!!」

 ミニデーモンとアリーナが言い争いが始まった。と思いきや、アリーナご自慢の拳がミニデーモンの顔に思いきりのめりこみ、そしてミニデーモンは遥か彼方へ飛んでいった。

「むかつくやつね」
「アリーナさま……相変わらず素敵です」
「ささ、汚れてしまった手をこれで拭いてください!」
「全く姫さまは……まあ、今回は見逃しましょう」

 はうっとりとアリーナに見とれ、点数を稼ごうとクリフトがハンカチで拭く。サントハイム城にやってきたということで奇跡の復活を遂げたブライが小言を言いかけて、やめた。故郷に帰ってきて、サントハイムの連携が急激に顔を出す。

「バルザックはきっと王座にいるはず。王座は階段を上って行けばすぐよ! 突入しましょ!」

 各々返事をし、階段を駆け上がった。駆け上がると、サントハイム王以外座ることの許されない王座に見たことの魔物が座っていた。

「やはり来たか、エドガンの娘よ! 再びこうして合間見えるとはな!」
「バルザック、貴様!!」
「どうだ! 見違えたであろう。私がバルザックだ。もはやデスピサロ様も……いや!デスピサロの奴も私には及ばないだろう。さあ来い、愚かでひ弱な人間共め!!」

 バルザックは分厚い鎧を身にまとっている。バルザックは緩慢な動きで王座から立ち上がり、自分に酔いしれているような笑みを浮かべた。皆はそれぞれ武器を構え、戦闘に突入した。前衛、、ライアン、アリーナがバルザックを取り囲み攻撃する。すぐさまクリフトはスクルトをかけ、ブライは、アリーナ、ライアン、トルネコ、にバイキルトをかける。はルカニをかけようとしているのだが、どうにもかからない。どうやらルカニは効きにくいようだった。
 バルザックはヒャダルコを唱え、更にこおりつく息を吐き出して一同はダメージを受けるが、すぐさまミネアとクリフトが皆にベホイミを唱えて回復する。

「バルザックは氷系を得意としてるようじゃから、攻撃魔法はメラミじゃマーニャ!」
「わかったよ!」

 すかさずマーニャのメラミが、前衛の間を縫うように通り抜け、バルザックに当たる。バルザックは低い声で唸る。効いているようだった。だがすぐさまヒャダルコとこおりつく息を吐き出した。威力は絶大。しかしクリフトとミネアのMPにも限りがある。早いとこケリを付つけなければならない。
 しかし物理攻撃はあまり効かないらしく、ブライのバイキルトをかけても前衛たちの攻撃はあまり効果がない。装甲が厚いからだろう。キーは魔法攻撃だ。

「……! 硬すぎよ!」
「進化を遂げたからさ!」
「くっ!!」

 バルザックの手がアリーナを弾き飛ばした。はかっとなり、懇親の力で槍を突く。
槍はバルザックの腕を貫通し、穴を開けた。

「小娘……!」

バルザックの攻撃のターゲットはになった。が、二発目のメラミがそれを回避する。

「あんたの相手はこのあたしだ!」
「エドガンの娘……父親もろとも私の手で殺してみせよう」
「させぬ!」

 ライアンの剣がバルザックの腹部に突き刺さる。そこへすかさずメラミ。再び唸り声を上げ、よろめいた。バルザックはもうそろそろ終わりのはずだ。

「ちっ……ミニデーモン!!」

 バルザックが呼ぶと、ミニデーモンが数匹やってきて、後衛を攻撃しようとする。は後衛の護衛に回り、トルネコと共にミニデーモンを攻撃していく。今まで同じ氷を得意とするためバルザックに攻撃できなかったブライはミニデーモンにヒャダルコ唱える。あっという間にミニデーモンは力尽きた。
 再びバルザックに攻撃をしようと前衛に戻ったときには、すでにバルザックはぼろぼろであった。

「いまだ! マーニャ、ミネア!」
「メラミ!」
「ギラ!」

 マーニャとミネアが攻撃魔法を唱え同時にバルザックに攻撃をすると、バルザックは断末魔の悲鳴を上げた。前衛はバルザックからはなれ、マーニャとミネアのために道を開ける。

「そんな……ばかな。完璧なはずの私の身体が打ちのめされるとは……進化の秘宝がある限り私は不滅のはず……」

 マーニャはから、ミネアはライアンから剣を受け取り、頷き合うと、バルザックの心臓に剣を突き刺した。バルザックは目を見開き「うっ、」と低い声を上げたと思ったら、息耐えた。勝利の瞬間だった。するとミニデーモンが二匹、ふわふわと飛んできて、じっとバルザックを見つめた。彼らに殺意などは感じなかったため、一同はそのミニデーモンの動きを見守る。彼らからは他のミニデーモンからは感じられない知性などを感じた。

「実験は失敗だったようだな。早くデスピサロさまに報告せねば」
「進化の秘法を完成させるにはやはり黄金の腕輪が必要なのだ。暗黒の力を増幅させると言う黄金の腕輪が」
「黄金の腕輪を手に入れ進化の秘法を完璧な物としたとき……。その時こそ我ら暗黒の世界のものの勝利のときぞ」

 それだけ言ってふわふわと謁見の間を出て行った。

「いま……黄金の腕輪って」
「はい。フレノールの宝物で、メイさんと引き換えに渡した……あれでしょうか」
「どういうこと?」

 サントハイムメンバー以外のメンバーの疑問をが代表して口にすると、アリーナが説明をはじめる。

「実はみんなと一緒に旅する前に、フレノールであたしのニセモノが捕まっててね、フレノールの宝である黄金の腕輪と交換に返してやる、っていうから、宝物を失敬して交換したのよ……」
「それが、さっきのミニデーモンが言っていた黄金の腕輪かもしれない、ってことか」
「やっぱりあやつらのことなんぞ放っておけばよかったんじゃ」
「けどブライさん、放っておけなかったじゃないですか」
「……まあな」

 小言を言いながらも人助けは惜しまないのがブライであった。

「繋がるね。進化の秘宝を見つけたあたしたちの父さん。そしてそれを完成させるために必要な黄金の腕輪」
「それで……バルザックで実験したわけですね。黄金の腕輪はなくても進化の秘宝は使えるかどうか」

 マーニャとミネアはそれぞれ礼を述べつつ剣を主に返して言った。

「ということは、地獄の帝王が蘇ったら、進化の秘宝で更に強くして、この世界を乗っ取るつもりでしょうか」
「だろうね。そしてそれを阻止するのが俺たち……しかし、これからどうすればいいんだ」

 が顔を突き合わせて考えをめぐらせていたそのときだった。

「ねえねえ……」

 子供のような幼い声が下から聞こえてきて、一瞬で皆の視線が声のした方へと向かう。声はスライムから発せられたものだった。

「あ……スライムさん!」

 このスライムはサントハイム城に住んでいたスライムだった。

「お久しぶり、ちゃん」
「お久しぶりです! どうしてここに!?」
「ボク、お城のみんなが消えちゃったとき、ちょうどサランにいってたんだ。それよりね、サランにボクと同じようにそのときいなかったサントハイムの兵士さんがいるんだ。会ってみたらなんかわかるかもしれないよ」
「そうでしたか……。無事でよかったです。ありがとうございます、、どうでしょう」

 に向き直ると、彼は頷いて、「サランにいこう」とサラン行きを決定した。