「おっはよ〜〜みなさん! どうでした? 昨日は?」 マーニャがニヤニヤ笑いながら宿屋から出てきた、クリフト、に問う。するとは急に沈んだ顔をして、とクリフトは苦笑いをした。 「……最悪です」 ぽつりの言葉にマーニャがえっ!? と悲鳴を上げる。何やら勘違いを起こしているようだった。 「は昨夜少しミス……といいますか、まあそのようなものをしてしまったので落ち込み気味なのですよ」 クリフトがあわてて説明を入れると、なーんだ、とマーニャがつまらなそうに唇を尖らせた。隣のミネアが姉さんっと非難めいた口調でマーニャを咎める。いつみてもバランスのよい姉妹だ。 「じゃあ張り切って、西の洞窟にいきましょっか!」 アリーナの声を皮切りに、一行は西の洞窟へ向かうことにした。コーミズの村から少しはなれた場所にある西の洞窟は、やはり魔物のすみかとなっていた。 洞窟は道が二手に別れていたりとややこしいが、まえに一度きたことがあるらしいマーニャとミネアがいるのでおそらく道に迷うことはないだろう。一番前をトルネコがたいまつを持って進み、その横をブライ。そのすぐ後ろをマーニャミネア姉妹。どちらの道を行くかを指揮している。そしてやはり今日もとクリフトは最後尾を隣同士で歩いていた。 「そういえばクリフト」 「なんです?」 「暗いところは平気なんですか?」 「……なんなんですか」 「いえ、高いところはダメなので、では暗いところは、と思いまして」 「平気ですっ。昔一緒に夜中で暗い城を探検したじゃありませんか。……あなた私のこと、ヘタレだと思ってませんか?」 「えへへ、ばれました?」 そしてその前を歩くのがとアリーナ。とクリフトの会話を聞きながらもはアリーナと会話を交わしながら進む。 (――仲いいんだな) 勿論、わかってはいたが、改めて感じる二人の距離の短さ。自分もシンシアとあのような感じだったのだろうか。過去の記憶を手繰り寄せて思い出すが、微妙に違っていた気がする。互いを尊重し、高めあっていたのは確かだが、あんな仲のよい雰囲気は出ていなかった気がする。もっともそれは、当人であったからその雰囲気を感じなかっただけかもしれないが。 「それにしてもとクリフトって本当に仲がいいわよね」 いいタイミングでアリーナが話題を持ち出した。たぶん彼女も後ろの二人の会話が聞こえていたのだろう。これはいい機会かもしれない。第三者からみたとクリフトの昔からの様子が聞きたかった。 「昔からあんな感じなの?」 「そうね。は騎士でクリフトは神官で、まったく接点がないはずなんだけど親同士が仲良くて小さい頃からずっと一緒なのよ。あんだけ仲いいなら結婚しちゃえばいいのにって感じよね」 「ん……そうだね」 「女中も、お父様とかもいってるのよ、結婚するんじゃないかって」 「……」 アリーナの言葉に、心に鉛が落ちてきたような気がした。国王までもが彼らの関係を公認していて、しかも後押ししているのだ。確かに自身、彼らは結婚してもおかしくない気がしている。だからこそアリーナの言葉は痛かった。 「はあたしの大事な友達だから、結婚する相手はあたしの承諾を得なきゃダメなんだけど、まあ、クリフトならいいかな。クリフトのこともよく知ってるし」 「承諾を得るしかないんだ。……じゃあ、俺は?」 自然と聞いてみてしまった。そしてこのときはうすうす自分の気持ちに気付き始めていた。 (きっと、クリフトに”嫉妬”してるんだろうな) そうなれば理由なんて一つしかない。 (俺はたぶん、のこと―――) アリーナがじっとの顔を見つめた。 「あんたもなかなかいい男だから、あ、外見も中身もね。だからいいわよ」 「いいの? 俺がのことお嫁さんにしても?」 「いいわ。のこと幸せにしてくれそうだもの。……ねえ、もしかしてあんたのことを?」 「…どうだろう。ヒミツってことで」 人差し指を立ててくちびるの前にもっていき、小さく笑った。自分以外の誰かが、自分のことを認めてくれたことがとても素敵なことだと感じ、嬉しく思った。 もしかしたらとクリフトは両想いなのかもしれない。それでも自分のこの気持ちに嘘はつけなくて、もはや気付かないふりなんてできない。それぐらい肥大してしまったへの気持ち。これは俗に言う、 (恋してる、ってことなんだろうな) 君が好きだ。。 認めた想い |