「ラピスラズリって、”天空のかけら”って言われてるんだよ。」

 夜の闇とちいさな星たちが空を彩る世界の片隅で、瑠璃とは肩を寄せ合って星空を眺めていた。不意につぶやいたの言葉に、瑠璃は何と言えばいいかわからず、「そうか」とだけ言った。

「瑠璃くんの核も、ラピスラズリでしょ」
「ああ」
「なら、瑠璃くんは空からおっこちてきて生まれたのかもしれないね」

 彼女の発想は少し突飛していて、たまにあっけにとられる時がある。いまだってそうだ。俺が空から落ちて生まれた? それとも俺の頭が固いだけなのだろうか。は不意にどこかを指さし「たとえば、」と戸惑う瑠璃にかまわず言葉を続ける。

「あそこらへんの空がね、なにかの拍子におっこちちゃってさ、おっこってくうちに宝石になったの。で、誰も空から落ちてきた欠片に気付くことなく時は流れて、瑠璃くんが誕生したの」
「……面白いことを考えるな」
「そうかな?」

 の話を聞いていると狭い自分の視野がどんどんと広がっていく気がした。自分の考えつかないようなこと、思いつかないようなことを、が紡いでいく。

「きっと、瑠璃くんが空から落ちてきたということに気付いたのはわたしだけだね」
「そうだな」

 こてん、とは瑠璃の肩に頭を載せた。

「でも、わたしが拾ったんだから、空に帰っちゃだめだよ」
「あたりまえだ。をおいてどこにもいかない」

 手をの肩にまわした。自然な流れだったと思うのだが、どうもこういったことには慣れていないためぎくしゃくとしてしまった。肩に手を触れるだけで、情けなくも心臓がちぢこまる。

「やくそく?」

 が頭を浮かせて瑠璃の顔を覗き込んだ。彼女の瞳には星が散りばめられていて、無限の夜空が広がっていた。ああこんなところにも、天空のかけらがあったではないか。

「やくそくだ」

 瑠璃は少し首を傾けて鼻がぶつからないようにして、くちびるとくちびるをゆっくりと重ねた。天空は、惹かれあう。




天空のかけらを拾いあげた少女

耳をすませばを最近見たので、発想が雫ちゃんみたいになってます。