ああ、綺麗だ。
言葉にすることはなく、ただ思った。
言葉にしたところで同意してくれる人も、批判してくれる人もいないのだから、言うだけ無駄だと思った。
キラキラ、キラキラ、どこまでもつづくこの世界の正体は”終焉”。

 

「瑠璃くん。」

誰か、

「真珠ちゃん。」

誰か、

「アレクさん」

返事をして

「蛍姫さん」

どうしてわたししかいないの?

「誰か…」

 

へた、と座り込むと、視界に入り込んできたのは粉々の美しい瑠璃色。ああ、ラピスラズリ。
近くにいるんじゃない。なんで返事してくれないの?一番最初にあなたのこと呼んだんだよ。

「瑠璃くん。綺麗な世界が広がってるの。」

ラピスラズリの破片を拾い上げて、高く掲げる。

「誰もいない。ただ綺麗な世界。わたしはひとりぼっちみたい。」

アレキサンドライトが最後に飲み込まれて、世界は瞬く間に姿を変えた。
ただひとり、わたしだけの世界になってしまった。

「いったい誰がこんな結末を望んだんだろうね。」

アレクサンドルは蛍姫の救いたかっただけで、
蛍姫は珠魅の癒したかっただけで、
瑠璃は仲間がほしかっただけで、
真珠姫は瑠璃と一緒にいたかっただけで、

いったい誰が、みなただの宝石として地面に還ってしまうことを望んだんだろう。
それぞれの思惑が交差して、結局残ったのはさみしさだけ。
ああ、とても静かだ。

 

さみしいのは誰もいないから。

(誰かわたしの名を呼んで。)